INDEXトークンのメタガバナンス機能を紹介
本記事では、Index Coopのガバナンストークン$INDEXのメタガバナンス機能について事例を用いて紹介をします。
$INDEXはIndex Coopのガバナンストークンであり、他のDeFiプロトコルのガバナンストークン同様、トークノミクスから人材の採用、DAO内の予算の割当など幅広い事項を決定する際の投票に利用されます。
また、Index Coopのプロダクトである$DPIを構成するDeFiプロトコルでの投票を行う機能も持ち合わせており、当機能が標題の「メタガバナンス」となります。
DPIについて理解する
メタガバナンスについて理解するために、まずは$DPIの概要を紹介します。$DPIは複数のDeFiプロトコルのトークンに資産を配分し、ERC20規格化されたインデックストークンです。一定のルールに従い構成比率が調整される仕組みであり、伝統的な金融商品としては投資信託等に似た性質の商品だということができるでしょう。
執筆時点(2021年12月11日)時点での構成銘柄や構成比率は以下の通りです。
執筆時点では、17種のDeFiトークンで構成されており、Uniswapのガバナンストークン$UNIが24%、Loopringのガバナンストークン$LRCが18.3%、AAVEのガバナンストークン$AAVEが13.3%を占めています。
また、執筆時点での$DPIの時価総額は1億3,700万ドル超となっています。
上記の時価総額、構成比率から換算すると、$DPIは約3,300万ドル分の$UNIトークンを保有していることが分かります。枚数にすると、約200万枚の$UNIトークンとなります(1$UNI=16ドルで計算)。CoinGeckoによると、現在の$UNIの循環枚数は約4億5,300万枚であり、$DPI内の$UNIは200万枚÷4億5,300万枚で、全体の約0.45%を占めていることが分かります。
同様の計算を行うと、$LRC、$AAVEについても全体の約0.8%のトークンを$DPIが保有していることが分かります。
メタガバナンスとは
次に本題のメタガバナンス機能について説明します。メタガバナンスとは、$DPI内のDeFiトークンを利用して、Index Coopが投票を行う行為を指します。
$INDEXホルダーはIndex Coopの提案に投票を行えるだけでなく、UniswapやCompound、AAVE等の投票についても間接的に参加することができるのです。
実際に投票ツールであるsnapshot内のIndex Coopのページを確認すると、執筆時点で$INDEXホルダーがCompoundとUniswapの提案に投票可能であることが分かります。
$INDEXホルダーは上記のCompoundやUniswapの提案に自身が保有する$INDEXを利用して投票を行います。注意すべき点は、この際$INDEXホルダーはCompoundやUniswapの提案に直接投票するわけではないということです。
投票が定足数に達した場合、Index CoopはCompoundやUniswapの提案に対し、投票結果に応じた賛成または反対の票を投じます。また、投票の際は保有するトークンすべてを賛成または反対に投じます。
例えば上記UNISWAP-1.10への投票にて、$INDEXホルダーが計8万枚の賛成票、4万枚の反対票を投じた場合、Index Coopは保有する約200万枚すべての$UNIを賛成に投じます。賛成、反対の割合に応じて票を分けることは行いません。
以上、$INDEXのメタガバナンス機能について概要を紹介しました。
メタガバナンスの実例
最後に、実際の数字や実例を用いてメタガバナンスの有効性を見ていきましょう。
まずは$UNIの数字を利用します。現在の$INDEXの循環枚数を勘案すると投票の定足数は約10万枚であり、現在の$INDEXの価格(約20ドル)換算で200万ドル程度となります。つまり反対票が10万枚以上ないと仮定すると、約200万ドルで$UNIの0.45%分の票をコントロールすることが可能ということになります。
一方で、$UNIの循環枚数の0.45%は上記の通り約200万枚であり、現在の価格16ドルで換算すると約3,200万ドルとなります。本来3,200万ドル必要な$UNIの0.45%分の投票数が、$INDEXのメタガバナンス機能を利用することで、約200万ドルですむことがわかるかと思います。
割合にして0.45%と一見小さな数字に思えますが、DeFiのガバナンスにおいては投票率の低さが共通の課題となっていることから、この数字が投票の賛否に大きな影響を与える可能性も否定できません。
次にメタガバナンスが効果的に利用された実例として、FeiプロトコルがAAVEに$FEIをリストさせた例を紹介します。当事例については、Tallyのニュースレターから概要を抜粋して紹介します。
まずFeiプロトコルは、OTC取引で$INDEXトークンを10万枚取得しました。この枚数は上述のとおりIndex Coopの提案における定足数をほぼ満たす数字であることに注目してください。そして、Index Coopにて$FEIのAAVE上場の提案を提出し、(IIP-82)OTCで取得した10万$INDEXで賛成票を投じます。
自らの投票の甲斐もあり、投票は無事賛成多数に終わります。次にFeiプロトコルはAAVEに自らのプロトコルのトークンである$FEIをリストする提案を提出しました(AIP-33)。AAVEでは提案の提出に0.5%超のトークンが必要となりますが、$DPIが0.5超の$AAVEを保有していたため、この$AAVEを利用して提案を提出しました。
最後にメタガバナンス機能により、Index Coopが保有していた約12万枚の$AAVEを賛成票に投じさせ、無事$FEIはAAVE上場を果たしました。
この事例では約400万ドルを利用して10万$INDEXを取得し、約3,000万ドル分の$AAVEを賛成票に投じさせることに成功しました。
以上、$INDEXのメタガバナンス機能について紹介しました。ガバナンス機能を持ったトークンは多数ありますが、$INDEXは当機能により多数のDeFiプロトコルに影響を与えることができる点で、一般のガバナンストークンと異なります。現在はあまり注目を集めていない機能ですが、$DPIの時価総額が大きくなるにつれ保有するDeFiトークンの枚数も増え、その影響も比例して大きくなります。その際には、本記事で紹介したFeiプロトコルのような事例が増えてくるのではないでしょうか。